青葉市子さんのエッセイ「星沙たち、」に、波照間島のことが書かれていました。日本最南端に位置する有人島。青葉市子さんの視点を通じて書かれたその島の様相は、美しく神秘的でした。少し調べると、波照間ブルーと呼ばれる素晴らしい海と、日本で唯一の南十字星の観測ができる星空の美しい場所として紹介されていました。海。星空。最高では? いつか行きたい。そう思いました。
行きました。2026/9/19(土)~22(火)の、シルバーウィーク真っ只中の3泊4日です。最初の2泊を波照間島で、最後の1泊を石垣島で過ごしました。離島旅行を初めて体験した人が、旅行でやったことや、感じたことを徒然と書いています。有用な情報を見たいというより、「ああ、こういう旅の感じ方もあるのか」と、何か違った視点を感じたい方、よければどうぞ。
*
一日目。
癒しもありつつ、カルチャーショック的な部分もありつつの初日でした。
台風25号の猛威が関東を直撃するというニュースが飛び交っていましたが、飛行機は、まるで台風を躱すかのように超飛びました。8:30に羽田を発ち、3時間ほどで石垣空港へ。そこからバスで30分ほどかけ、ユーグレナ石垣港離島ターミナルへ。幸運なことに、波照間島への船も運行している。ミルミル本舗のアイスやら、八重山そばやらを食べて出港に向けて肉体を作り、八重山そばを食べた「カフェ ゆうな」さんから、「観光楽しんでくださいねー!」と元気に見送っていただき、勢いで乗船用に酔い止めもしっかり飲みます。飛行機の時と合わせ、すでにこの日二度目の酔い止め。後先なんて考えていられません。
実はこの時点で、ちょっと自分の悪いところが出ていました。前日に飲み会があり、帰宅したのは23時過ぎ。起きたのは5時頃なので、実質4時間と少ししか寝ていませんでした。疲れで移動中は大体寝ている状態です。計画性と自重という言葉達が、ヒソヒソと私の悪口を言っているのを感じました。
到着。お世話になった宿はホテルオーシャンズさんです。港までワゴンで迎えに来てくれていて、五分もせずにホテルに到着。にっこりと笑う女将さんが印象的でした。もう夕方でしたので、電動自転車を借りて海を見て、その後ご飯でも食べに行こうと思いました。
ニシ浜から見る海の美しさ。素晴らしいです。さすが日本一と呼ばれるだけあります。「いやー、来てよかったなぁ」なんて呑気なことを考え、しっかり感動を味わった後、スマホで食事処を探し始めました。いくつかありそうなのは知っていたのですが、事細かには見ていませんでした。
全部の食事処、すでに予約で一杯でどこにも入れませんでした。
え、そんなことあるの? と少し驚きました。しかし、よくよく考えてみれば島に数軒しかない食事処に観光客が来るのですから、席の争奪戦は必至。Googleマップの口コミを見ても、やはり予約がないと基本入れないとめちゃくちゃ書いてありました。無計画さが仇になりました。いくつかの店は満席の看板がばっちり出ており、いくつかの店は電話の応答がなく、ある店は「今日は漁から帰った人の貸切でね〜ごめんね〜」と言われてしまいました。
仕方ありません。島にはコンビニのような販売所がいくつかあり、そのうちの一つにお世話になることにしました。店で買って、カップ麺やらなにやらをホテルの中で食べる。悪くない、いえ、むしろ最高に美味しかったです。
そういえばと、ここで思い出します。ホテルオーシャンズさんは屋上を常に開放しており、いつでも星空が見れるのです。海と星空が今回の旅のメインの目的。お酒類を持って屋上に行ってみました。屋上は真っ暗で、私一人だけでした。
ゴザが用意されていたので、それを敷いて座り、オリオンビールを飲みながら空を見上げました。確かに星空は見えます。ですが月が素晴らしく明るく、街灯も多少存在しているので、満点の星空という感じではありませんでした。綺麗でしたし、お酒で機嫌もよくなっていました。時刻が20:30頃だったというのもあったと思います。しばらくして、部屋に戻って寝ました。
*
二日目。
いい意味で自分の悪い部分に気がつき、どんどん島の魅力に気づいていく日になりました。
朝早くに起きました。なぜなら「海は朝の満潮の時が綺麗。ウミガメとも遭遇できる可能性も高い」との情報を得ていたからです。
漁船やフェリーが行き来する港あたりに、テトラポッドから遠くの海まで見渡せるところがあり、そこが撮影スポットなんだとか。以下のようなところですね。

行きました。が、あいにく二日目は晴れているものの風が強く、定期船も一部の便は欠航を余儀なくされるような状態でした。「ちょっと荒々しい波照間ブルー」。決して否定とかではなく、十分美しく、感動しました。

ニシ浜でシュノーケリングもしました。素晴らしく綺麗な海で、クマノミのような魚や、ナンヨウハギのような魚など、多様な種類の魚たちがいました。ただ水圧の関係か、防水ケースに入れたスマホのシャッターが切れなかったり、勝手に動画になるなど、挙動不振でうまく撮れませんでした。

もっと色とりどりの魚がいます。
そして波が強い。ニシ浜は遠浅なので、浜から100mぐらいは足がつきます。胸ぐらいの深さで波を受けると、後ろに仰け反りそうになり、たたらを踏みました。もしかしたらウミガメと一緒に泳げるかもしれない。もっともっと。ただ自分が感動を得たい一心で、沖へ沖へと泳ぎました。
唐突に視界が開け、一気に水深が深くなりました。どれぐらいでしょう。波で砂が舞い上がっているのか、底が見えない。最低でも5メートルはあると思いました。遠くにうっすらと珊瑚の大きな影が見えています。それ以外は、一面モヤのかかったような、青緑の海がズーンと連なっている。先ほどまで一緒に泳いでいた魚たちもいません。波に体が大きく揺られました。冷たい海流が体を伝いました。このまま沖まで一気に持っていかれるような、そんな感覚がありました。
ぞっとしました。
方向転換して浜の方へ。波の力も手伝って、一瞬で浜まで戻されました。
このあたりで、自分の中に良くないものが巣くっていることに気づけました。
それは、波照間島に行くだけで何かとてつもない美しさが自分自身を圧倒してくれるという、あまりにも傲慢な期待でした。計画も詳細に立てず、旅行前日に酔って体力を使っているくせに「きっと自分ならいい結果になる」という、ポジティブを通り越してもはやナルシストな思考でした。勝手な理想を押し付けて、「何か違う」と感じたら勝手に気分を落とす、自己中心的で横柄な薄っぺらぺら色白クソ野郎の考えでした。
わりと本気で自己嫌悪に陥りました。
私が波照間島だったら眼中にすらないでしょうが、とにかく、私は自分の過剰な期待みたいなものをすべて捨て去りました。具体的には、目の前で起きていることや、自分のやりたいことを、もっとしっかり見つめるようにしました。
行動として大きかったのは、ホテルの女将さんに話しかけに行ったことでしょうか。島の文化も知らずに自分で理想像を作っているのがよくない。それなら聞いて受け入れればいい。最初に聞いたのは、「お昼ご飯でおすすめの場所ないですか?」です。極めてシンプル。
「そうですねぇ、ぶどぅまれーさんか、あとふそこさんか…でもやってるかどうかは行ってみないとわからないんですよね。それぞれ好きにやってるので」
「あー、そうなんですね。わかりました。直接行って聞いたりしても、迷惑になったりしないですかね?」
「それは大丈夫です~。みんなそんな感じなので」
「よかったです。じゃあ直接聞きに行ってみます」
「あ、うちのホテルのエントランスに周辺マップあるので、それ見てもらえるといいかもですよ」

女神から国家機密的な地図を授かり、お昼ごはんは一番近かった「ぶどぅまれー」さんのところにお邪魔してみることにしました。ここは昨日漁師さんの打ち上げで貸切になっていた場所でした。「今日空いてますか?」という私の問いに、よく日に焼けたお兄さんが笑いながら答えてくれました。
「空いてますよ! 好きな席座ってちょっと待ってて!」
「ありがとうございます!」
初めての波照間島での店内食事。うますぎました。

そこから、どんどん島のことが好きになっていきました。
波照間の海の美しさ、砂浜のヤドカリが斜面を転げ落ちる可愛らしさ、電動自転車で駆ける時の風の心地よさ、最南端の碑の断崖で見た海の力強さ、水の柔らかさ、波照間の人の笑顔の屈託のなさ。
さとうきび畑のサラサラとした音、至るところにいる猫、草原にかけこんでいくハラシロクイナのヒナ達、全然逃げないカラス、めちゃくちゃ逃げる鳩、沖縄語で書かれた看板、あとふそこカフェさんの波照間ブルー氷の泡波ソーダ割り、夜中に出会ったヤシガニの子供、真っ暗な世界を照らしていた美しい半月。
自分の中に新しい触覚でも生えたかのように、見るものすべてに新鮮味が感じられ、自由で、時間が永遠のようにゆっくりと感じられました。極上の時間でした。
計画性や自重と、少しは仲良くなれそうかしら。
*
三日目。
相撲取りに後ろ髪を引かれながら石垣へ。
その日も比較的海が時化ていたのか、昼の便が欠航していて、朝か夕方の船しかありませんでした。夕方まで様々な場所をほっつき歩いてぼーっとするのも悪くはないなと思いましたが、波照間の激しい日光に晒され続けるのはリアルに危ないと思い、朝の便で帰ることにしました。最後にもう一度海が見たいと女神(ホテルの女将)にお願いし、朝早くから海を見てきました。
ウミガメがいました。海上からではありますが、対照的な2匹のウミガメを見れました。
1匹はテトラポッドの先の沖にいたウミガメで、勢いよく息継ぎし、すぐに潜ってさらに沖へと繰り出していきました。もう1匹は船着場の中にいたウミガメで、甲羅は苔にまみれており、息継ぎを何度もしていて、海面近くでヒレをパチャパチャとさせながら、ゆっくり沖に向かっていました。おそらくですが、船着場にいたウミガメは少し弱っていたのかなと思います。
ウミガメが見れた感動もありつつ、少し複雑な気持ちでもありました。もし弱っているのであれば、自分に何かできるのだろうか。そもそも本当に弱っているのだろうか。そもそも弱っていたとして、何かをした方がいいのだろうか。誰かに相談するか。しかしホテルに戻っている間に、ウミガメは拙い泳ぎでどこかに行くでしょう。
結局、私はなにもせずにその場を去りました。ニシ浜をボーッと眺めます。その日も海は綺麗で、変わらずそこにあり続けていました。
なんとなく、わからないことってたくさんあるんだなと思っていました。波照間のこともまだまだわからないことが多いです。ウミガメをあの時どうした方がよかったのかもわからないです。友人やパートナーのことも、自分のことも、わからなくなることがあります。だからこそ、「こうすべき」「こうなっているべき」という先入観で縛られた生き方はしたくない。先入観を捨て、体験を素直に感じ、その時大切にしている考えで行動する自分でありたいな。そんなことを思いました。
*
石垣島では、お土産を買ったり食事を楽しんだりしました。石垣牛焼肉go slowの台風を心配してくれた元気な店員さん。チェックアウト時に、近くのランチのおすすめどころを教えて下さったゲストハウスおり姫のオーナーさん。ホタルガラスのブレスを購入した時に「波照間行けたのはすごいねぇ」と言ってくださった販売員の方。関わった方々皆親切で、自然と笑顔になれました。
最後に、一日目にも行った「カフェ ゆうな」さんのところでランチを食べて帰りました。
「あれ、お兄さんまた来てくれたんですか!?」
ああもう、覚えてたんかい。嬉しいんですけど。はい、また来ましたし、多分数年以内にまた来ます。波照間島・石垣島の旅、最高でした。
*
P.S. お土産。私の波照間・石垣旅行は、もう少し続きそうです。

付けているのはホタルガラスのブレス












コメント